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土用とは。年に4回ある土旺用事と土用の丑の日について

五節句・雑節・縁日

毎年7月になるとスーパーマーケット等で「土用の丑の日」としてウナギなどが販売されますが、そもそも「土用」って何?と思いませんか?

土曜日では無い「土用」と書かれているけど、昔からあるみたいだけど何が起源になっていて、どういう意味があるのか詳しく説明します。

土用とは

  • 読み方:どよう

土用は、雑節の1つで、四立(立春立夏立秋立冬)の直前約18日間のことです。

二十四節気・五節句などの暦日のほかに、季節の移り変わりを、より適格に掴むために、またそれらの暦日の補助的な意味合いもあって、特別な暦日が設けられるようになりました。これを雑節と言います。
雑節のいずれもが、日本人の長い生活体験から生まれたもので、主に農作業と照らし合わされ、基本となって生まれています。
雑節は古くから日本人の生活の中に溶け込んで、年中行事・民俗行事となっていることがあります。

つまり例年、下記の期間が土用の期間となります。

  • 1月中旬から2月上旬:冬の土用
  • 4月中旬から5月上旬:春の土用
  • 7月中旬から8月上旬:夏の土用
  • 10月中旬から11月上旬:秋の土用

立春や立夏、立秋、立冬は毎年同じくらいの日にはなりますが、1~2日ズレることもあるので、土用の期間も毎年ズレます。

四立とか立春とか言われると、昔ながらの日本の古風な考え方だと思うかもしれませんが、天文学的に計測されて日にち(時間)は決められているものです。

そのため、土用の期間については国立天文台が毎年発表しています。

土用は正式には「土旺用事(どおうようじ)」と言い、略して土用と言っています。

土用の意味と成り立ち

古代中国からある五行思想から土用は生まれました。

五行思想とは、古代中国を端とする自然哲学・思想です。万物は木・火・土・金・水の5つの元素からなるという考え方です。それぞれ5つの元素には、相生・比和・相剋という関係があります。例えば木は燃えて火を生み出す相生の関係で「吉」、火と火は同じ性質で関係が強まる関係の比和として「吉」、水は火を消すため相剋の関係となって「凶」と見ます。

五行思想をよく理解していないと把握しにくいのですが、春夏秋冬にはそれぞれ五行が配置されています。

春は木、夏は火、秋は金、冬は水という五行の気質が割当てられています。土が余りますが、土は季節の変わり目に当てはめられました。この季節の変わり目に土を当てはめた期間が土用となっています。

立春立夏立秋立冬の四立はそれぞれ春・夏・秋・冬に切り替わる時であり、その直前は季節の変わり目となるので、四立の前に土用が割当てられています。

もちろん五行の「土」が余ったから割り当てたという単純な話ではありません。季節の変わり目には、土が大きく影響していると考えられたからです。

また季節が変わる時にそのまま五行の気質がすんなりと変化するのは難しいという考えから、季節のスムーズな移行期間として、緩衝材的に土を配置しています。

Wikipediaには下記のように書かれています。

五行の性質において、木気は植物のような発育伸長する勢いある傾向、火気は勢いが頂点に達し燃え盛る性質、金気は熱や勢いが衰え凝縮・固化しつつある状態、水気は凝縮しきってエネルギーを秘めつつ静的に留まった状態であり、これらは四季、太陽、植物などの周期変化の観察から象徴化された。

土気は土壌におくと種が発芽することの観察から、大きな変化を促し保護する働きと場所の象徴である。四季にはそれぞれ象徴である木火金水が順当に割り当てられたが、そのままでは季節が変わる際に性質の異なる気が接しギャップが生じる事になる。

現実のスムーズな移行にはバッファ的に働き現在から次の季節の気へと変容させる期間があり、ここで土気が活発に働いているとみたのが土用(土の働き)である。

Wikipediaより

やはり五行思想を理解していないと理解が難しいのですが、昔の人は五行によって世界が成り立っていると信じており、木(植物)からの恵み、火(太陽等)の恵み、金(金属類)の恵み、水の恵み、そして土の恵みを大切にしてきたからこそ、信じたのでしょうね。

なお土用はそれぞれ約18日間、合計約72日間になりますが、これにも意味があります。

1年間を5(五行の5)で割ると、それぞれ72日ほどになるので、約72日間となっています。

また土用の基準となる四立、つまり二十四節気は、現在は太陽の位置で決められるのですが、土用の期間は太陽位置が360度(地球の周りを太陽が移動するので360度)うち、18度ずつ移動しますが、それが4回あれば72度となり、角度的にも5分の1(1/5)となっています。春夏秋冬と土用、それぞれ太陽が72度移動する期間になっています。

なお土用の正式名称は「土旺用事」と書きましたが、これは「土の気が旺(さかん)になり事を用うる」意とされています。

土用の期間の禁忌・やってはいけないこと

土用の期間は土の気が盛んになると考えられ、五行陰陽説と結びついて、土をいじること(穴掘りや土を動かす工事等)は良くないこと、禁忌とされました。

これは土の神である土公神(陰陽道の神)が支配する期間であり、土をいじることは神への冒涜とされたからです。

また殺生も禁忌とされていました。

ただし、土用に入る前に着工していた工事・作業であれば土用に入っても続けても差し支えない・問題ないとされました。

ただし「土用の間日」と呼ばれる日は土をいじっても問題無いとされました。これは土公神が間日には、文殊菩薩に招かれて天上に行くため、地上にいないから問題ないと理由からでした。

でも今にして思えば、陰陽道と神道と仏教が入り混じったことであって、冷静に考えるとおかしいと思いますよね。神仏習合によって生まれた思想とも言えます。

ただ見方を変えて、農家や土建業の方に季節に1度くらいは休む日にしましょうという気持ちで生まれたものでは?と思ってみると、実は土用って良い日なのでは?と思えてきませんか?

実はそんな思いから生まれたんじゃないのかな?思ってしまいます。

土用の間日

土用の間日は、土用の期間の日の干支(十二支)によって決まります。

なぜ、このような十二支の組み合わせになったのかは、わかりません。

土用の求め方・主流は定気法

土用の期間は、平気法と定気法、2つの方法で求めることがありますが、現在の主流は定気法です。

  • 平気法=四立の前18日を固定で土用とする方法
  • 定気法=太陽黄径で求める方法(17~19日の間になる)

土用の期間と土用の間日・土用の丑の日

具体的に土用の期間はいつからいつまでで、土用の間日はいつなのか、説明しますが、「土用入り」という言葉がある通り、土用に入る日があります。

土用入りというのは、天文学的に示された瞬間(太陽が決まった位置にきた瞬間)のことですが、今ではその瞬間を含む日を「土用入り」としています。

土用の期間が終わる日を「土用明け」と言いますが、「土用明け」は四立(立春立夏立秋立冬)の前日にあたるため、節分となります。

節分と言えば2月だけだと思われていますが、節分は「季ける」という意味で年に4回あります。

2021年の土用と土用の間日と土用の丑の日

土用 土用入 土用明け 丑の日 間日 日数
冬土用 1月17日 2月2日 1月17日
1月29日
1/18・1/19・1/21
1/30・1/31・2/2
17日間
春土用 4月17日 5月4日 4月23日 4/19・4/27・4/28
5/1
17日間
夏土用 7月19日 8月6日 7月28日 7/19・7/23・7/30
7/31・8/4
18日間
秋土用 10月20日 11月6日 10月20日
11月1日
10/26・10/28・10/30 17日間

土用の日の期間だけで見ると69日間と非常に短くなる年です。

2022年の土用と土用の間日

土用 土用入 土用明け 丑の日 間日 日数
冬土用 1月17日 2月3日 1月24日 1/25・1/26・1/28 18日間
春土用 4月17日 5月4日 4月18日
4月30日
4/22・4/23・4/26
5/4
18日間
夏土用 7月20日 8月6日 7月23日
8月4日
7/25・7/26・7/30
8/6
18日間
秋土用 10月20日 11月6日 10月27日 10/21・10/23・10/25
11/2・11/4・11/6
18日間

土用の期間が綺麗にすべて18日となっています。

2023年の土用と土用の間日

土用 土用入 土用明け 丑の日 間日 日数
冬土用 1月17日 2月3日 1月19日
1月31日
1/20・1/21・1/23
2/1・2/2
18日間
春土用 4月17日 5月5日 4月25日 4/17・4/18・4/21
4/29・4/30・5/3
19日間
夏土用 7月20日 8月7日 7月30日 7/20・7/21・7/25
8/1・8/2・8/6
19日間
秋土用 10月21日 11月7日 10月22日
11月3日
10/28・10/30・11/1 18日間

土用の期間が74日間と長くなっている年です。

2024年の土用と土用の間日

土用 土用入 土用明け 丑の日 間日 日数
冬土用 1月18日 2月3日 1月26日 1/18・1/27・1/28
1/30
17日間
春土用 4月16日 5月4日 4月19日
5月1日
4/23・4/24・4/27 19日間
夏土用 7月19日 8月6日 7月24日
8月5日
7/19・7/26・7/27
7/31
19日間
秋土用 10月20日 11月6日 10月28日 10/22・10/24・10/26
11/3・11/5
18日間

夏の土用が2回あります。

2025年の土用と土用の間日

土用 土用入 土用明け 丑の日 間日 日数
冬土用 1月17日 2月2日 1月20日
2月1日
1/21・1/22・1/24
2/2
17日間
春土用 4月17日 5月4日 4月26日 4/18・4/19・4/22
4/30・5/1・5/4
18日間
夏土用 7月19日 8月6日 7月19日
7月31日
7/21・7/22・7/26
8/2・8/3
19日間
秋土用 10月20日 11月6日 10月23日
11月4日
10/21・10/29・10/31
11/2
18日間

夏の土用の丑の日が2回あります。

土用の丑の日

うな重

最近では土用と言えば「土用の丑の日」しか意識しないことも多くなりましたが、一般的に言われている土用の丑の日は「夏の土用の丑の日」のことです。

年によっては2回、土用の丑の日がある場合もあり、その場合は最初の土用の丑の日を「一の丑」2回目の土用の丑の日を「ニの丑」と言います。

土用の丑の日と言えば、ウナギを食べる日とされていますが、これは「栄養価の高いウナギを食べて暑い時期を乗り切る」とされており、万葉集にも詠まれています。

一方で「う」のつくものを食べると夏バテしない・夏の暑さに負けない説もあり「うどん」や「うめぼし」などを食べると良いとしている場合もあります。

この風習がいつ始まったのか諸説ありますが、安永・天明の頃(1772年~1788年)くらいからとされています。

またウナギを食べると良いとしたのは平賀源内というのも有名な話ですが、確定的な証拠はなく、通説の範囲を出ていません。

平賀源内がウナギを流行らせたということにおいても諸説あり、一般的には商売が上手くいっていない鰻屋が夏になってウナギが売れないことを平賀源内に相談したところ「本日丑の日」と店先に貼りだしたら売れるようになり、それが定着したというものです。

つまり夏の土用の丑の日にウナギを食べるようになった理由は明らかになっていないということです。

寒の土用の丑の日

土用は夏だけでなく、各季節であることは説明した通りですが、冬の土用の丑の日にも「うなぎ」を食べよう!という動きがあります。

これを「寒の土用の丑の日」として長野県岡谷市などが中心となって盛り上げようとしています。

ただあまり定着はしていないようです。

土用の丑湯

夏バテ予防として、土用の丑の日には、薬湯に入る風習もあります。薬湯とは薬草を入れたお風呂のことです。これを「丑湯」と言います。

ドクダミやお茶などの薬草を入れたりしたそうです。

土用に関すること

土用に関することを記していきます。

土用の虫干し

夏の土用の時期は梅雨が終わり、晴れる時期になります。

そのため、着物等を虫干しして湿気を取るというのが風習になっていました。

これを「土用の虫干し」と言います。梅雨の間に湿気を含んだ衣類を干して虫やカビを防ぐというのは、化学繊維の無かった江戸時代を考えれば当然のことだったのでしょうね。

土用三郎・梅雨太郎

夏の土用の3日目のことを「土用三郎」もしくは「梅雨太郎」と言い、農家の厄日に数えられていました。

この日の天候で豊作・凶作を占う風習からです。

土用三郎が雨なら土用中は雨が多くなり凶作になる、晴れなら豊作になるという言い伝えがあったそうです。

土用灸

土用に灸治を行うと他の季節に行うよりも効き目があると信じられていたそうです。

これを土用灸と言ったそうです。

昔の人はこういった迷信を信じていたのですが、今にして思えば不思議なものですね。

土用に関するリンク

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