社日は、雑節に数えることもある、産土神を祀る日です。
春分の日・秋分の日に最も近い戊(つちのえ)の日が社日となります。
社日はどういうことを行い、どういう起源があったのか説明していきます。
社日とは
- 読み方:しゃにち
社日は、産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日です。
春と秋にあり、春の社日を「春社(しゅんしゃ・はるしゃ)」、秋の社日を「秋社(しゅうしゃ・あきしゃ)」と言います。
元々は古代中国に由来し、「社」は土地の守護神、土の神を意味するとされています。
なお産土神は、うぶすながみ・うぶしなのかみ・うぶのかみ と読みます
地神の祭り
日本の雑節に取り込まれた社日は、その後日本の神道と結びついていきます。
土地神として地神を祀る習俗が生まれ、地神さんと呼ばれる「地神塔」を建て、社日には幟(のぼり)を立てて、しめ縄を張り祭りを行う地域もあります。
農神としての伝承
社日に祀る神を土地の守護神というよりは、農業の神・農神とする伝承もあります。
地域によりかなり異なりますが、社日が早く来る年は豊作になると言いところがあったり、社日には田畑に入ってはいけないというところがあったりします。
春分の日と秋分の日に因んで行われる社日ですが、春は農耕の始まりの時期であり、秋は収穫の重要な時期にあたり、農業が生活の中心だった日本において特別な意味が持たれるようになったのは自然なことだったのかもしれません。
社日参り
社日には神社に参拝に行くという風習が各地で見られますが、地域によって参拝の方法がかなり異なっています。
一番多いのが、鳥居のある神社7社に歩いて参拝に行くと風習が残っており、社日参り・七鳥居参り などと言われています。
8つの八幡社に参拝するというものや、五社参り・十二社参りなどもあります。
社日の配当・社日の日にち
社日は、春分の日・秋分の日に最も近い戊(つちのえ)の日とされています。
十干の甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の「戊」です。
- 春分の日(3月20日頃)にもっとも近い「戊(つちのえ)の日」
- 秋分の日(9月23日頃)にもっとも近い「戊(つちのえ)の日」
戊の日なんてあるの?と思うかもしれませんが、戊の後に十二支がつきます。
- 戊辰:つちのえたつ(龍)・1928年・1988年
- 戊寅:つちのえとら(虎)・1938年・1998年
- 戊子:つちのえね(鼠)・1948年・2008年
- 戊戌:つちのえいぬ(犬)・1958年・2018年
- 戊申:つちのえさる(猿)・1968年・2028年
- 戊午:つちのえうま(馬)・1978年・2038年
上記の6パターンです。
ただし戊と戊のちょうど中間に春分の日・秋分の日が来る場合(つまり、春分の日・秋分の日が癸(みずのと)の日となる場合)は、春分・秋分の瞬間が午前中なら前の戊の日、午後なら後の戊の日とするようになっています。
もしくは前の戊の日にするという決め方もあるそうです。
言葉の説明だと意味がわかりにくいと思うので図解します。
仮に3月20日が春分の日だった場合、一番近い戊の日は3月20日が「癸」以外なら簡単に求められます。
しかし春分の日・秋分の日が「癸」の場合、「前の戊の日」にするか「後の戊の日」にするか問題が出る訳です。
そこで春分・秋分の日の瞬間で決めようということになっています。
ここ10年の社日は下記の通りです。
年 | 春社 | 秋社 |
2021年 | 3月21日 | 9月27日 |
2022年 | 3月16日 | 9月22日 |
2023年 | 3月21日 | 9月27日 |
2024年 | 3月25日 | 9月21日 |
2025年 | 3月20日 | 9月26日 |
2026年 | 3月25日 | 9月21日 |
2027年 | 3月20日 | 9月26日 |
2028年 | 3月24日 | 9月20日 |
2029年 | 3月19日 | 9月25日 |
2030年 | 3月24日 | 9月20日 |
太文字のところは、春分の日が「癸」になっているため、春分の瞬間の判断で前か後にしている日です。
春分・秋分の瞬間って何?と思うかもしれませんが、春分・秋分には3つの意味があります。
- 瞬間としての春分・秋分
- 日としての春分・秋分
- 期間としての春分・秋分
球体の中心に地球を配置したものを天球と考えてください。
一般的には地球から見た空を1つの球体とみなしたものを天球と説明しています。
しかし球体の中心に地球を配置したものを天球とみなした方がわかりやすいと思います。
天球にそって地球から見た時に太陽が通る道を黄道と言います。
自転軸に垂直な平面を赤道と言い、赤道を天球まで伸ばしたものを天の赤道と言います。
黄道と天の赤道が交わる日(厳密には瞬間)が年に2回あり、その1つが春分、もう1つを秋分と言います。
この交わる瞬間が春分・秋分のそれぞれの瞬間となります。
どちらが春分でどちらが秋分かは、黄道にそって太陽が南側から北側に上がっていくのが春分で、北側から南側に下がっていくのが秋分となっています。
参考までにここ10年くらいの春分・秋分の瞬間は下記の通りです。
年 | 春分 | 春分の瞬間 | 秋分 | 春分の瞬間 |
2021年 | 3月20日 | 18:37 | 9月23日 | 4:21 |
2022年 | 3月21日 | 0:33 | 9月23日 | 10:03 |
2023年 | 3月21日 | 6:24 | 9月23日 | 15:50 |
2024年 | 3月20日 | 12:06 | 9月22日 | 21:43 |
2025年 | 3月20日 | 18:01 | 9月23日 | 3:19 |
2026年 | 3月20日 | 23:45 | 9月23日 | 9:05 |
2027年 | 3月21日 | 5:24 | 9月23日 | 15:01 |
2028年 | 3月20日 | 11:16 | 9月22日 | 20:44 |
2029年 | 3月20日 | 17:01 | 9月23日 | 2:38 |
2030年 | 3月20日 | 22:51 | 9月23日 | 8:26 |
社日に関すること
社日に関することを記していきます。
仏教としての彼岸・神道としての社日
春分・秋分を基準としてその前後にある雑節と言えば、彼岸と社日です。
彼岸は仏教と結びついて、社日は神道と結びついたと言えます。
宗教が人々に大きな影響を与えていた明治時代まで、神か仏に感謝する、先祖を大切にするというのは当たり前のことで、春分・秋分という特別な日には、神か仏への祭日・仏事を行うのが自然の流れだったと言えます。
社日にしてはいけないこと
社日は産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日ということで、土を動かすことはNGと言われています。
そのため土を動かすことを伴う工事や畑作業、ガーデニングや家庭菜園などは行わない方がいいかもしれません。
社日でのお供え物
社日で神社や自宅の神棚などにお供えする場合、以前は下記のものが一般的でした。
- 春社:植えるものの種
- 秋社:秋の収穫物(秋の野菜、秋の果物)
現在では上記に加え下記のものをお供えすることが多いです。
- 新米・お酒・おはぎ(ぼたもち)
おはぎ(ぼたもち)は、後からお彼岸と結びついて供えられるようになったのではないかと思われます。
と言うのも、おはぎ(ぼたもち)に使われる小豆は、邪気を払う効果があると信じられていたため、邪気を払う食べ物としての先祖の供養の際に供えをしたのがはじまりとされています。
つまり産土神(生まれた土地の守護神)を祀る日とされる社日に供えるのは少し違うように思いますが、神仏習合だった過去の日本を考えると、それほど区別していなかったのかもしれません。
ただし産土神は、地縁による信仰意識に基づくものであり先祖という血縁による信仰意識に基づくものとは異なると考えると、おはぎ(ぼたもち)を供えるのは少し違うのかもしれません。
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