干支を構成する要素は十干と十二支です。
ただ暦や暦注を見る上で、どういう意味があり、どう考えれば良いのかわかりにくい部分もあるので、十干について詳しく説明します。
十干の意味と五行節と陰陽節
十干は、中国の殷(紀元前17世紀頃~紀元前1046年)にはあったとされています。
古代中国では1ヶ月を3分割して「旬」(10日単位)という単位を作り、十干という順序符号をつけました。
十干は順序符号、つまり1から10までを表す符号(しるし)だった訳です。
簡単に言えば「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10(0)」という数字的な意味合いしかありませんでした。
その後、陰陽節や五行説が戦国時代(紀元前5世紀から紀元前221年)に登場して、十干や十二支と結びついていろいろな意味合いを持つようになりました。
結果、十干は陰陽節での陰と陽、五行での「木・火・土・金・水」と結びついて意味を持つようになりました。
十干 | 音読み | 訓読み | 意味 | 占い読み/ 五行読み |
甲 | コウ | きのえ | 木の兄 | こうぼく |
乙 | オツ | きのと | 木の弟 | おつぼく |
丙 | ヘイ | ひのえ | 火の兄 | へいか |
丁 | テイ | ひのと | 火の弟 | ていか |
戊 | ボ | つちのえ | 土の兄 | ぼど |
己 | キ | つちのと | 土の弟 | きど |
庚 | コウ | かのえ | 金の兄 | こうきん |
辛 | シン | かのと | 金の弟 | しんきん |
壬 | ジン | みずのえ | 水の兄 | じんすい |
癸 | キ | みずのと | 水の弟 | きすい |
訓読みした際に「え」と「と」が最後についているが、合わせて「えと」になります。もちろん後付けですが、「え」は兄、「と」は弟という意味があり、兄弟となります。
干支を「えと」と読むようになった由来は陰陽節が関係している訳です。
そして「え」は陽であり「と」は陰というように陰陽節で分けられています。
陰陽で分けると下記の通りです。
陽 | 甲 きのえ |
丙 ひのえ |
戊 つちのえ |
庚 かのえ |
壬 みずのえ |
陰 | 乙 きのと |
丁 ひのと |
己 つちのと |
辛 かのと |
癸 みずのと |
上段が訓読みの最後がすべて「え」となっており、下段の訓読みの最後が「と」になっているのがわかります。
そしてそれぞれのペアに五行説の「木・火・土・金・水」が割り振られています。
十干の語源
十干が陰陽節と結びついたことで、それぞれに意味を持つようになりました。
甲:きのえ
甲はもともと「よろい・かぶと」という意味で、甲冑の甲から導かれた言葉です。
早期の種子を覆う厚皮のことでした。種子が発芽するにあたって、まだ厚皮を被っている状態を「甲」は表しています。
そこから「草木の芽生え、鱗芽のかいわれの象意 」という意味になります。
乙:きのと
乙はもともと「軋(きしる)」を語源としており、草木の幼芽がいまだ自由に伸長しないで、屈曲している状態を表しています。
そこから「“軋”に通じ、陽気のまだ伸びない、かがまっているところ」という意味になります。
丙:ひのえ
丙はもともと「炳(あきらかの意)をその語源としており、草木が伸長して、その姿かたちが著明になった状態を表しています。
そこから「“炳”に通じ、陽気の発揚 」という意味になります。
丁:ひのと
丁はもともと「丁壮(壮年の男子の意味)」と同意で、草木の姿かたちが充実した状態を表しています。
そこから「陽気の充溢(じゅういつ・満ちあふれること) 」という意味になります。
戊:つちのえ
戊はもともと「茂(しげる)」を語源とし、草木が繁茂して盛大となった状態を表しています。
そこから「“茂”に通じ、陽気による分化繁栄 」という意味になります。
己:つちのと
己はもともと「紀(すじ)」を語源とし、草木が十分に繁茂して盛大となり、かつその条理の整然となった状態を表しています。
そこから「“紀”に通じ、分散を防ぐ統制作用 」という意味になります。
庚:かのえ
庚はもともと「更(あらたまるの意)」と同語で、草木が成熟固結して行き詰まった結果、自ら新しいものに改まっていこうとする状態を表しています。
そこから「“紀”に通じ、分散を防ぐ統制作用 」という意味になります。
辛:かのと
辛はもともと「新(あらたまるの意)」と同語で、草木が枯死して、新しくなろうとする状態を表しています。
そこから「陰による統制の強化 」という意味になります。
壬:みずのえ
壬はもともと「妊(はらむの意)」を語源としており、草木の種子の内部に更に新しいものがはらまれる状態を表しています。
そこから「“妊”に通じ、陽気を下に姙む意」という意味になります。
癸:みずのと
癸はもともと「撥(はかるの意)」を語源としており、草木の種子の内部にはらまれたものが、次第に形づくられて、その長さを測ることができるほどになった状態を表しています。
そこから「“揆”に同じく生命のない残物を清算して地ならしを行い、新たな生長を行う待機の状態 」という意味になります。
十干が使われているもの・十干の派生
十干は馴染みが無いと思う人と馴染みが深いと思う方がいると思いますが、実際に十干が使われているもの、十干が元となっているもの、十干から派生したものを紹介します。
旬と結びつく十干
十干は「古代中国では1ヶ月を3分割して”旬”(10日単位)という単位を作り、十干という順序符号をつけました。」と先述しました。
古代中国「殷」の時代は、10個の太陽が存在していてそれが毎日交代で上がり、10日で一巡すると考えられていました。そのため十干はそれぞれの太陽につけられた名前と言われています。
この太陽が10日で一巡することを「旬」と言います。
ひと月を3つにわけて「初旬」「中旬」「下旬」と呼ぶのはこの「旬」に由来しています。
だから概ね10日ごとに区切っている訳です。
数字の変わりに使われている十干
昭和15年(1940年)頃まで、一部の地域や学校では通知表は「甲乙丙丁…」で成績をつけていました。
甲乙丙丁の4段階、もしくは甲乙丙の3段階でつけられていたそうです。
- 甲:優、乙:良、丙:可
- 甲:優、乙:良、丙:可、丁:不可
また国家資格の危険物取扱者は3種類ありますが今でも「甲乙丙」と十干が使われています。
「甲乙つけがたい」も十干の甲乙が元となっています。
恵方も十干で決まる
節分になるとスーパーやコンビニでは恵方巻が販売されるようになりまし。昔は地域によっては恵方巻を食べる風習なんて無かったんですけどね。
それはさておき、恵方巻は恵方という方向を向いて食べるものとされていますが、恵方(の方向)は、十干によって決まります。
十干は1から10を表しているので、西暦にしても下一桁が一致するので、西暦の下一桁の対応表で簡単に恵方がわかるようになっています。
- 4・9の年:東北東
- 0・5の年:西南西
- 1・3・6・8の年:南南東
- 2・7の年:北北西
十干が十二干だったらもう少し面倒な計算になったのでしょうね。
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